イイコでしょ?

「かけた事はありませんけど。」




「はぁ…知ってるんだ。」





そこでまたくしゃっと眉を寄せる。





本当に好きなんだな。






「じゃあ今から拓人くんに電話して、駅前のホテルに呼び出してくれない?部屋番号は後でメールするって言って。」






「ちょちょちょちょっと待って下さい!私既婚者なんです!ホテルはさすがに…」






と、必死に指輪を見せてアピールする。





「大丈夫。あなたは拓人くんが来たら帰っていいから。ねっ?お願い!あなたしかこんな事頼れないのよ!」





どうしてそこまでして浮気性の男性に惹かれるのか。




泣かされ続けてるのに、どうしてそこまで頑張れるのか。




ちょっと、分かる気がして。





相手が翔さんで、カレンさんと同じ立場だとしたら、私もこんなズルい真似するかも知れない。





好き、で周りが見えなくて。





どうしても彼の側に居たくて。





例えどんなに酷い男だとしても。







そう思うと自然と…ってアレ?





カバンに突っ込んだ手が訴える。





ケータイないよ!って。





バカだな、私。






「あの、私今日会社にケータイ忘れて来ちゃって…」





申し訳なく頭を下げると、カレンさんは長くて綺麗な腕を伸ばし、ダッシュボードをガコンと開けた。




ゴソゴソと漁って中から出てきた一台のケータイ。




コレ使って?と、差し出される。






「こっちの番号は健くん知らないから。」






「でも…知らない番号に出てくれますかね?」






「大丈夫。拓人くん、気に入った子には直ぐ番号教えるから、知らない番号でも喜んで出るよ。私もそうだったし…」






弱い人なのか強い人なのか…




だけどこれで佐藤さんが自分の思ってるような人じゃないって事は分かった。




普通にショックだな。


















「…じゃあ、ホテルで待ってます。」






隣で彼女が聞いてると思うと、すごく居た堪れなくて。





早く電話を切りたかった。





なぜかすいません、とカレンさんに頭を下げる。





私からの電話で、直ぐに来る事を約束してくれた佐藤さんが未だに信じられなくて。






悔しそうに唇を噛みしめるカレンさんの運転で、例のホテルへと向かった。