イイコでしょ?

スーツケースを持った翔さんが玄関で靴を履く。





私はその光景をぼんやりと眺めていた。





顔を上げた翔さんが、私の顔を伺った。





「んな顔すんな。行きたくなくなる。」






「だって…」





こんな未練がましい事して、なんて面倒な女なんだろう。





一週間後にはもう帰って来てるのに。





夕べはたくさん話してくれた。





私が不安にならないように、ベッドでギュッと抱きしめて、向こうでのスケジュールを。





井上さんとは違うホテルを取っていたらしくて、それに井上さんは二日後には先に日本へ帰国するらしい。





翔さんは何度も言ってくれた。





心配すんな、って。





「俺もなるべく早く帰れるように頼んではみるから。」




浮かない表情の私の頭をポンポンと撫でる大きな手。




翔さんの顔を見上げると、いつになく優しい表情で、余計に寂しさが募る。





私は我慢出来ずに自分から翔さんの肩に手を回し、ギュッと抱きしめた。





「…寂しい…」




「…お前。」





怒ってるかな。



昨日散々言い聞かされたのに…



翔さんの香りを胸いっぱいに吸い込んだ。






「マジで俺を行かせねぇ気か。」





そのセリフが耳に流れ込むと直ぐに顔を胸から離され、吸い付くようにキスをされた。





背中に回った翔さんの手が、柔らかに移動すると、キスの隙間から甘い吐息が漏れる。





「……んぁ…しょ…さん…」





口を動かすと、間からヌルリと翔さんの舌が侵入してきた。





唇から漏れる濡れた音が、耳を刺激して私を熱くさせる。





理性なんてぶっ飛んでしまうくらいにトロトロに溶かされて…





でももう家出なきゃ飛行機の時間間に合わない。






「翔さ…ん…飛行機…」





まだ理性が残っている内に言ったけど。





「もういい。一つ遅らせるから。」





「えっ?でも…」





「俺をその気にさせたお前が悪い。」





鼻の先をピタリとくっ付け不敵に笑うと、私の背中を壁に押し付け再び深いキスをした。