イイコでしょ?












「…お前、服はどうした。」






タオル一枚だった私の肌が、ぞわぞわと栗立つ。





けど。





「…抱いて…下さい。」






私の精一杯の言葉が、翔さんの読んでいた新聞の擦れる音と共に消える。





緊張で手や口は震えて仕方ないけど、真っ直ぐにソファーに座る翔さんの元へ歩く。





髪から流れた雫が、冷えたフローリングにポツリと跡をつけた。






翔さんが新聞を畳んでいる間に、目の前まで到着すると、私はもう一度決意の言葉を告げようと、大きく息を吸い込んだ。






「翔さん、私を抱い…」





「何の真似?」





耳を掠める声が、少し機嫌の悪い物だと直ぐに分かった。





冷めてしまった身体。





温かい翔さんの掌が私の手首を強く握りしめ、驚いて肩が跳ねた。






翔さんの顔は怖くて見れないけど、フゥ…と小さなため息が聞こえてきた。






「なに…さみしいのか?明日から俺が居ねえのが。」





私は一回だけ、小さく頭を縦に振った。






「たった一週間だろうが。直ぐに帰ってくんだろ。そんな事で、こんな出来もしねぇ事しやがって。震えてんだよ、手が。」






握られた手首が強く圧迫された。





そんな事、と聞いて私の中の何かが、プチン…と音を立てて切れた。






今まで我慢してきた想いが次々と溢れ出す。






「そんな事じゃないもん!一週間も翔さんに会えない上に、元カノとずっと一緒だなんて耐えられない!


翔さんは私の夫なんだし信じようって思えば思うほど、なんか苦しくて。


だって私翔さんに愛されてる自信ないもん。井上さんの事だって何も言ってくれないから一人でいっぱい悩んだんだよ?」





口がもつれて上手く言葉が出てこない。




ちゃんと順序立てて話さなきゃ翔さんに怒られちゃう。




だけど今の私には到底無理で、無意識に言葉が重ねられていく。





「あんなに綺麗で頭もよくて仕事も出来る井上さんに、何一つ勝てる要素が無いんだもん…


私バカだからこんな事しか…もうこうでもしなきゃ翔さんの事繋ぎ止められないよ!」





次第にボヤけていく視界。




熱い涙が頬を伝い、それを拭おうと空いた手を顔に運ぶ。





顔に触れる刹那、立ち上がった翔さんが私の身体を抱き寄せた。