イイコでしょ?












リリは今日も俺を急かす。





星が一つも見当たらない今夜は、雨の前の独特な匂いが漂っていて、散歩を中止にしようと言う俺を無視して走り出すリリ。





俺も直ぐに諦めて、早く行けば早く帰れる、と頭を切り替えて散歩に付き合う事にした。

















海が来なくなった今でも散歩コースであるこの公園。





何時ものように自販機でコーヒーを買っていると、頬に掛かる冷たい小さな雫。





「ほらやっぱり降ってき…」





雨に気を取られていた俺の手から、スルリとリードが抜け落ちた。





何かを察知したかのように突然走り出したリリが、キャンキャンと吠えながら公園の奥へと消えてってしまった。


















雨はまだ小降り。





リリの鳴き声を頼りに辺りを探していると、いつものベンチの方へと続いた。





「リリ、もう雨降ってきたし…」





少し息を切らせながら近づいていくと、見覚えのある後ろ姿を見つけた。





「海…」





ベンチに胡座をかいて座った海が、リリを抱き上げ顔を寄せていた。





「ご主人さまはどこ?」





俺の存在にはまだ、気付いてないようだ。





リリにそっと語りかける。





「なんかさ、気まずくなっちゃって…どうしよ。ヤダなぁーもう…あんな事言わなきゃ良かった。」






シトシトと静かに降る雨にも負けてしまうくらいの小さな声。





海はいつでも笑顔で、




いつでも喋っていた。




うるせぇぐらいに元気で、




俺はそんな海が人として好きだった。






でも今目の前に居る海は、




今にも涙を零しそうに震えてる。






「あたしね、ずっと前から…知ってたんだよ?リリと和くんの事。」





クゥゥン、とリリが鼻を鳴らした。




俺は黙って話の続きを聞いていた。