イイコでしょ?

「何かの撮影中じゃなかったんですか?」






「今は休憩、てか待ち時間超長いからさ、全然ヘーキ。ここのラーメン超美味いでしょ?」





佐藤さんに連れて来て貰ったラーメン屋さんは、とても有名人が来るような素敵なお店とは程遠い、どちらかというと酔ったサラリーマンが居そうな、そんなお店だった。





お客さんは私たちを入れれば5人程度。




カウンターに並んで、佐藤さんと同じラーメンを啜る。





「すっごく美味しい!」




「でっしょー!俺も最初食った時今の美希ちゃんみたいな顔してた」





撮影の合間とあって佐藤さんは髪や顔がセットされていて、もうテレビで見るあの佐藤さんで、




人気俳優の顔をしている佐藤さんが私の名前を呼んでいるのが、かなり違和感に思えて仕方なかった。

















見た目は人気俳優佐藤拓人丸出しだけど、中身はやっぱりジムでの気さくな佐藤さんで、




ラーメンを食べながら、色々な話で楽しませてくれた。





さっきまで鬱々してた自分が嘘みたい。





狭いお店に笑い声を響かせていると、気づかない内に店内には撮影のスタッフの方が数名来ていた。





時間を忘れ話込んでいたので、元気を貰えた私は慌ててお金を置いて席を立った。






「こんな美味しいお店連れて来て頂いてありがとうございました!じゃあ私会社戻りますんで、撮影頑張って下さいね!」





軽く頭を下げ、お店を出ようとすると…






______ガシッ






手首がキュッと熱く締まる。





「ちょっと待って。お金いいよ。俺に払わせて?」





「えっ?でもそんなの悪いですから。」





「俺も男だしさ、女の子にお金使わせるワケにいかないじゃん?ねっ?分かったって言うまで、この手離さないからね?」





「…わ、分かりました。」





私の返事を聞いて、にっこりと頬を緩ませる佐藤さん。





だけど。






「あの、手…」





「ん、わざとなんだけど。」





一瞬、跳ね上がる心臓。



まっすぐに見つめられて、視線が離せない。



三秒程の間があった後、直ぐにまた無邪気な笑顔に戻る。





「じゃ、お仕事頑張ってね~!」





そう言ってパッと離された手首からは、しばらく熱が残ったままだった。