イイコでしょ?

「あたしケータイ持ってんの。」





「いや、それ結構な割合でみんな持ってると思うけど?」





「へ~そうなんだ。和也くんは?」





「一応持ってます。」





「ふぅ~ん。で?」





「……で?」





で?、と聞き返した瞬間に、海の頬がプーッと膨れジトッとした瞳で俺を見た。





「なに?えっ?ケータイが何なのよ。」





「ずっ………と!待ってんだけど。」





「何をよ。」





って聞いたら、むぅぅ!って威嚇しながら、





「番号!!何で聞かない!女子から言わせないでバカ!!」





勢いよく言い放ち、腕を組みプイとそっぽを向いてしまった。





そっか。そういうもんか。



そういう事、あんましてこなかったからな。





海の顔を伺うように覗き込んでやると、唇を尖らせながら視線を逸らされた。




「番号なんて知らなくたって、いつでも会えんじゃん。ほぼ毎日居んでしょ?どうせ」





俺は、「そうだね!」って答えてくれると思ってた。




いつもみたいに、あははって笑って、「お互い暇だねー!」とか言っちゃってくれると思ってたのに。




でも何だ?




目の前に居る海は、別人のように笑顔を消して…





「分かったよ。んじゃあたし今日は帰るね。」





「えっ?ちょ、海?」





ちっこい身体ででっけぇバイクに跨って、ヘルメットを被る間の一瞬見えた顔は、切なく歪んでるように見えた。





バイバイと言い残し、大きなエンジン音を落としながら、夜の闇へと消えて行った。





「なんだよ…あれ。」





ポツリと零れた言葉が、無性に空っぽに思えた。




きっと明日もここで歌ってんだろ?




だから別に番号くらい。




約束なんてしなくたって…




そういうヤツだよな?海。

















次の日も、




その次の日も、




一週間が過ぎても、




あの場所に海が来る事はなかった。