イイコでしょ?

「今度どっか連れてってあげよっか?」




「えっ?ソレで?」





眉を顰めてバイクと海をジッと見つめた。




「もちろん!しゃーないから後ろ乗っけてあげる♪」





「やだよおっかねぇ」






「じゃあリリ乗っけてあげる」





「殺す気か」





二人のフワリとした軽い笑い声に混じって、リリが楽しそうに吠えた。





今日も空を見上げれば、春の夜空に小さな輝きがポツポツ。





二人と一匹で居ると、星を見ても笑って居られんだ。





自分がちゃんと笑えてる事に、安心する。





安心して海を見ると、こいつもなんだか安心したように俺を見ていた。



















ケータイの着信音が鳴り響く。





俺は常にマナーモードだから、直ぐに海のだという事が分かった。





バイクに跨ったまま、ジャケットのポケットを漁りケータイを取り出した海が、画面を見てめんどくさそうに顔を顰めた。






わかりやすいぐらい大きなため息を吐いて、電話の相手と話し始めた。






「まだ!」











「だからまだだって言ってんの!そんな急かされたら出来るもんも出来ないじゃん!」





何の事だろ。



よくよく考えたら、俺海の事名前とフリーターって事しか知らねえわ。





声を荒らげながら、電話の相手に、まだ!を繰り返す海をぼんやり眺めていると、少し海が遠く感じた。





不機嫌そうに電話を切ると、ケータイに向かって、ベーっと子どもみたいに舌を出していた。






何の事だか俺には全然わかんなかったけど、俺が立ち入る事じゃないのは確か。





だから俺は何も聞かない。




何も聞けない。