イイコでしょ?

「あ、今度のNYへの出張だけど、私も一緒に同行する事になったから。」





「えっ?」





「向こうの支店長は私のおじさんだから。」





「そう言えばそんな事…」





「社長の時も同行してたし、これは社長から命じられた事だから。」





「そ。」






そんな会話を、井上さんが手にしたブランド物のバックをぼんやり見つめながら、どこか他人事のように聞いていた。





じゃあ、と帰ろうとした井上さんを翔さんが呼び止める。





「由香、送ってくよ。もう遅い。」





付き合っていた頃の名残りが、まだ身体に染み付いてんだ。




翔さんの口から名前が出た瞬間に、胸が張り裂けそうになった。





井上さんは私の顔色を伺うように、チラチラと視線を向け、





「いえ、いいわ。タクシーで帰るから。」





「いや、この辺タクシー中々掴まんねぇし、送るよ。美希ちょっとこいつ送ってくるから、先に寝てろ。」





「えっ?あ、はい。」

















イヤだ。




なんて子どもみたいなワガママ言えない。




ほんとは大きな声で叫んで縋って、泣いて喚いて…





行かないで、って。





出張だって二人きりなんて絶対嫌!って。





声に出して言いたいのに。





二人の背中を笑って見送る…



弱い私は、ドアが閉まると同時に涙を一粒零した。
















夢の中でも分かる。





翔さんが小さな私の背中、抱きしめてくれた事。





ありがとう、って夢の中で呟いた。




この腕があれば、私はいつだって幸せを取り戻せるよ。




何があっても、信じるから。



もっと私を愛して。

















目が覚めるとベッドの上。





夢の中と同じ、翔さんに包まれていた私の身体は、朝から幸せを噛みしめる。





「ありがと…」





小さな小さな言葉を零すと、それに応えるかのように、私を包む腕にぎゅっと力が増した。





まだ夢の中の翔さんを起こさないように、そっとベッドから抜け出して、二人で食べる朝食を作りにキッチンへと向かった。