イイコでしょ?

「あ、でもさ、その前にあの人居るから無理じゃん?」





「あの人って?」





「えーっ知らないの?」





あの人…?



何の事だろ。





「あの秘書の井上さんだよ。」





井上さん…がどうかしたの?



何かイヤな予感が…





「昔付き合ってたんだって。井上さんはまだ好きみたいよ~。ケータイの待ち受け成瀬さんだったの、あたし見ちゃった!!もう結婚しちゃったのにさ、一途だよねー!」





……付き合ってた?




そうなんだ。




私知らない。




井上さん、まだ翔さんの事…





「えっ?じゃあ嫁と元カノと一緒に働いてるって事?エグーい」





「でも今は元カノ有利じゃん?」





「なんで?」





「だって今井上さん、成瀬さん専属の秘書になってるでしょ?」






あぁ、なんか頭痛い。



なんで私トイレ来ちゃったんだろ。



こんなとこ来なきゃこんな話聞かずに済んだのに。



仕事終わってスーパー行って、ご飯何にしよっかなぁ~って嬉しい悩み抱えて帰れたのに。



それで今日も優しい翔さんの腕の中で、幸せな夢見れたのに。



私のバカ。






ケータイの小さな画面に映る、成瀬さんの穏やかな寝顔を見つめながら、唇を噛んだ。


















今日に限って……





ケータイのメール画面を開きながら出るのは、深いため息。





「ねぇ、今日飲み行く?」





なんだかご機嫌な海崎さんが、隣からひょっこり顔を出して誘って来た。





「んー、ごめん。今日はちょっと…」





「何?副社長?いーーなーー新婚~!」





「うん、まぁそうだね。」







『今日は早く帰れるから一緒にメシでも行こう』






絵文字もなんにもないメッセージ。





素っ気ないけど、こういう風にご飯誘われるなんて初めてで、すっごく嬉しいはずなのに…





昼間の子達の会話が、ずっと頭ん中旋回してて、素直に喜べない自分が居る。





こんな不安定な気持ちで一緒にご飯だなんて。





大丈夫かな。