イイコでしょ?

「で、おたく誰?」






「いやコッチが聞きたいんだけど!」





静寂を破った唐突な質問に半笑いで突っ込んでやると、楽しそうな笑い声が聞こえた。





「あたしは倉橋海。自由人です。」






そう言ってぺこりと頭を下げて、ニッと歯を見せて笑った。






「自由人って。フリーターって事ね、俺は二宮和也、ただのサラリーマン。」





「夜は?」





「スーパーマン、ではないからね。」






ケラケラ笑う彼女の髪が肩の辺りでユラユラ揺れて、着ていたミリタリーのジャケットが、カサカサ鳴った。






よく見たら、まだ寒いのに素足にビーチサンダルだし。






なんか不思議で仕方なかった。






さっきのギター鳴らして歌っていた彼女とは全く違う顔で。






初めて会った俺にずっと笑顔を向けていた。






「ねぇ知ってる?」





「何が?」





「この池の名前。」






「ん?何だっけ?確か…モミジ池かなんかだっけ?」






「そうなんだけど、もう一つ隠れた呼び名があってね…」






内緒話をするように、真剣な表情で俺の耳元で囁く。






「人喰い池、って言うの…」






言い方にドキリとして、顔をしかめながらパッと彼女の顔を見た。






すると…






「ふっはっはっはっはぁぁぁーっ!!またビビったぁ!!」






どうやら人を脅かすのが好きなだけの、ただの自由人だった。






お腹を抱えて笑ってる彼女にチッと舌打ちをして、立ち上がる。






もう十分だ。



これ以上付き合いきれねぇ。




変なヤツだと思って興味が湧いたけど、めんどくせぇ。






背中を向け、帰ろうと足を進めると、






「かーずくん!」






名前を呼ばれた。




立ち止まり、一度ため息をついてから振り返る。






「また明日」






にっこりと笑って、右手をグーパーしてみせる。






「もう来ねえよ。」






そう言って早足でその場を立ち去った。