イイコでしょ?

大きな窓に向かって並べられたマシンからは、全面に夜景が広がっている。





まさか自分が東京の夜景を見ながらウォーキングするなんて、夢にも思ってなかったなー、なんてボーっと歩きながら考えていると、





視界の端に人影が映り込み、私の隣で走り始めたのが分かった。





向こうの方に一人おじさんがダンベルしてたのを思い出し、その人かなぁと目を向けてみる。





あれ?違った。おじさんじゃない。




そこに居たのは、まだ若い…同い年ぐらいの青年だった。





誰だろ…見たことあるような無いような…





スラリと伸びた長い手足が左右に揺れて、男の人なのに、「美しい」と思ってしまった。





その、絵になるような美しさと、見たことあるような…というモヤモヤとした感情で、歩きながら少しの間見惚れてしまっていた。






誰?



中学の…高校の…大学の…



どこで見たんだろう~。



すんごい気になってきちゃった。



でもこんな綺麗な男の人、忘れそうにないんだけどなぁ~。



なんか、あの人に似てる。



今ドラマ出てる…







「……っ?!佐藤拓人??!」






思わず叫んでしまった名前は、今人気のドラマに出てる俳優さんの名前。






叫びながら足が止まってしまった為、流されてコロンと後ろへ倒れてしまった。






「ててて…」





腰を抑えて呻いていると、





「大丈夫?」





わざわざ中断して私に手を差し伸べてくれた佐藤さん。





差し出された手と、爽やかなルックスを交互に見る。





東京来て結構経つけど、芸能人初めてこんな間近で見た。





すごく顔ちっちゃいし、優しいんだな。





以外…ってか私今フルネーム叫んじゃったよね?!






「ごっごめんなさいっ!!私思いっきり名前…」






右手で口元を抑え、キョロキョロと辺りを見回してみるけど、ダンベルのおじさんも何時の間にか消えていて、ジムに居るのは私達二人だけだった。






良かった…誰も聞いてなくて。




それより佐藤さんがここに居るって事は、このマンションに住んでるって事だよね。




「腰、大丈夫?立てる?」






「いや、はい全然問題ないです。ごめんなさい私びっくりしちゃって。」






差し出された手を掴むのはちょっと申し訳なく思って、大丈夫です、と何度も言って自分で立ち上がった。