イイコでしょ?

「ちょっと来い。」





私の真後ろに立った副社長を見て、海崎さんと松本さんがきゅっと口を結んだ。





クルッと首だけを動かして見上げると、いつもよりも怒りのオーラが強いのが見て取れた。






なんか怒ってる…けど怒られるような事はしてないもん。





と、少し強気に、





「ランチ食べてからでいいですか?」





と、前に向き直り鯖を口に入れた。






「いいから来い。」





でもそんな事はお構いなしで、私の腕を強い力で掴んで身体をヒョイと浮き上がらせた。





「ぅわっ!ちょっ、ちょっと!」





お箸が落ちて床をコロコロと転がる。





その落ちたお箸が海崎さんの足元へ行き、海崎さんがそれを拾い上げる。





「それはちょっと強引じゃないですかね?美希ちゃん嫌がってるように見えますけど。」






いつもは見せない海崎さんの表情。






副社長である成瀬さんを下から睨みあげる。





「社内中誰もが知ってると思ってたが、こいつと俺は夫婦だ。夫婦の事に口出しをするな。」





「ちょっと言い過ぎ!やめてよ!」





「夫婦だからこそ、そういう接し方はどうかと思いますけど?」

と松本さんが言ってくれたが




「いいか、今後一切こいつに指一本触れんじゃねぇ。」






怒気を帯びた低い声が、私の耳を掠め流れる。





何がなんだか分からない内に、後ろ向きのまま成瀬さんに腕を引かれて連れて行かれ、

食堂入口で脱げてしまったパンプスを置き去りにしたまま、喚く私の声も届かなくて。





振り返らずに、ズンズン歩を進める。




廊下の端でピタリと止まると、今の時間帯は使う事もない会議室に、押し込むようにして入れられた。