五月三日、今日の3時間目は調理実習でお吸い物を作る。小さい頃お母さんと作った時の思い出を振り返ってみた。青い布の真ん中に、三日月のアップリケがついたエプロン。そこまでは思い出せたけど、作り方なんて真っ白だった。
『ねぇ、春樹!うちら調理実習の班、一緒だよ‼︎』
『あー、ホントだ。』
『なに〜?嬉しくないの?!』
『嬉しい、嬉しい。』
三角巾と右胸の位置に黄色い糸で月が刺繍された青いエプロンを持って、菜々子と家庭科室へ向かった。
『他の班のメンバーは?』
『えっとねー、大輝くんと、、、。あ!あといずみくんだ!』
『へー、そっか。二人ともそんなに話したことないんだけど、、、。』
『大丈夫だって!なんてったってうちがいるんだし!』
そう言ってポンっと自分の胸を叩く菜々子は、みんなの人気者で男の子とも女の子とも仲がいい。
私とは大違いだ。
ーガチャガチャ。
『菜々子!そんな持ち方したら手!切っちゃうでしょうが!』
『えー、だってさー椎茸切りにくいんだもん。』
『私がやるから!そっちのやってて!』
『はーい、、、。』
菜々子は運動神経がよくて勉強もできて、友達だって多いし、可愛いし。
なんでも出来る万能な子なのに、なぜか料理だけは全くだった。
(やっぱ菜々子も苦手なことあるんだ。)
そんな事を考えながら2個目の椎茸を切り始めた時だった。横に誰かが立ってるのに気がついて、手を止めた。
『あの、、、どうかした?』
大和いずみ。クラスで一番背の高い男の子、クラスで一番静かな男の子。
『、、、いや。』
『そ、、、そっか。』
(どうしたんだろ、、、)
そう思いながらもう一度切り始めたとき、彼が声をかけてきた。
『うわぁ、、、。』
今度は悲劇的な声を出して椎茸を見ている。
なんだかそれがおかしくって、
『椎茸、嫌いなの?』
と、少し笑いながら聞いた。すると、彼が驚いた顔をした後に
『いや、、、あんまり食べた事ないからわかんない。』
と、高い位置から呟いた。
ガチャガチャと、食器と食器が当たる音。なにやら楽しげに会話するクラスメイトの声。真剣に何かを切っている男の子。
そんな大勢いる空間で、何気ない会話をした私たち。
普段なら忘れちゃいそうなくらいちっちゃな出来事だったけど。何故かずっと覚えている。
『私はね、椎茸好きなんだ。大和くん、今日好きになるかもね。』
3年経った今も、あの日の君が笑って言ってたあの言葉を、はっきり覚えてる。
ー『好きになるかもね。』
『ねぇ、春樹!うちら調理実習の班、一緒だよ‼︎』
『あー、ホントだ。』
『なに〜?嬉しくないの?!』
『嬉しい、嬉しい。』
三角巾と右胸の位置に黄色い糸で月が刺繍された青いエプロンを持って、菜々子と家庭科室へ向かった。
『他の班のメンバーは?』
『えっとねー、大輝くんと、、、。あ!あといずみくんだ!』
『へー、そっか。二人ともそんなに話したことないんだけど、、、。』
『大丈夫だって!なんてったってうちがいるんだし!』
そう言ってポンっと自分の胸を叩く菜々子は、みんなの人気者で男の子とも女の子とも仲がいい。
私とは大違いだ。
ーガチャガチャ。
『菜々子!そんな持ち方したら手!切っちゃうでしょうが!』
『えー、だってさー椎茸切りにくいんだもん。』
『私がやるから!そっちのやってて!』
『はーい、、、。』
菜々子は運動神経がよくて勉強もできて、友達だって多いし、可愛いし。
なんでも出来る万能な子なのに、なぜか料理だけは全くだった。
(やっぱ菜々子も苦手なことあるんだ。)
そんな事を考えながら2個目の椎茸を切り始めた時だった。横に誰かが立ってるのに気がついて、手を止めた。
『あの、、、どうかした?』
大和いずみ。クラスで一番背の高い男の子、クラスで一番静かな男の子。
『、、、いや。』
『そ、、、そっか。』
(どうしたんだろ、、、)
そう思いながらもう一度切り始めたとき、彼が声をかけてきた。
『うわぁ、、、。』
今度は悲劇的な声を出して椎茸を見ている。
なんだかそれがおかしくって、
『椎茸、嫌いなの?』
と、少し笑いながら聞いた。すると、彼が驚いた顔をした後に
『いや、、、あんまり食べた事ないからわかんない。』
と、高い位置から呟いた。
ガチャガチャと、食器と食器が当たる音。なにやら楽しげに会話するクラスメイトの声。真剣に何かを切っている男の子。
そんな大勢いる空間で、何気ない会話をした私たち。
普段なら忘れちゃいそうなくらいちっちゃな出来事だったけど。何故かずっと覚えている。
『私はね、椎茸好きなんだ。大和くん、今日好きになるかもね。』
3年経った今も、あの日の君が笑って言ってたあの言葉を、はっきり覚えてる。
ー『好きになるかもね。』
