《1.不味い酒 》 行きつけのバーにきた俺は、言い争いを横にウイスキーを飲んでいた。 別れ話だろうか。女が腫れた頬を押さえて泣いていた。 不意に男の拳が「黙れ」という声とともに上がる。 それを見た俺は思わず立ち上がり、男を殴り倒した。 人を殴ったのは初めてだ。俺は金を置いて逃げるように酒場から出た。 なぜ、男を許せなかったのか。あまりにも女が似ていた。 病死した妻に。 拳に響く微かな痛み。 後悔した。あのバーには二度と行けないなと。