輪廻転生。

それは人が生まれては死に、死んではまた生まれ変わることをいう。



肉体は有限であれども魂は無限。

人が死して肉体が滅びても、魂は巡りめぐって新たな体に定着する。

それが再び人であるとは限らず、現世で人であっても前世では人ならざるものだったかもしれない。

それは来世で再び人として生まれることは約束されていないことを意味する。



しかし世の中の出来事はすべてに必然的な理由がある。

その事象が起こる条件の一つでも欠ければそれは起きず、条件すなわち理由は、すべて『必要』となる。

加え、どんな不可解なことにも必ず理由があるのも世の心理。

人は、因果法則の下でしか生きられない生物なのだから。





『彼』があの日、あの場所で、ああやって死したことが再び『彼』が人として生を得るための必要条件だったのだ。

もし何かが違えば、『彼』は今、自由気ままに生きる猫だったかもしれないし、大空を羽ばたく鳥だったかもしれない。



しかし、その〝もし"を考える必要は全くない。

過ぎ去った時間にもし別なことが起こったら、などと考えるのは非合理的なことであり、時間の無駄である。




『彼』は死したゆえに輪廻転生の介入を受け、再び生を得た。

再び死すれば、次なる生が待っている。


だが来世に繋がる前に、『彼』が〝異例の状態"で生を得たことがどのような結果に繋がり、それが何の原因になり、さらに何を起こすか―――――すなわち、『未来』を知る術は誰も持ちえていないのである。