「沙耶子ー、あんた彼氏つくんないの?」

卵焼きを口に運ぼうとした手を一旦とめて、私は綾香を見る。


「…彼氏いるのが良いことなの?」

「んなことないけどさ、だってあたしら入学してもう3ヶ月も経つんだよ?!
そろそろイイ人の1人や2人…」

大きく溜息を尽きながら、まだ食べきっていない卵焼きをお弁当に戻し蓋を閉じた。

「沙耶子?」

「ごめん、ちょっとトイレ」

席を立ち、早足で教室を出てトイレに向かう。
彼氏…か。
私はつくらないんじゃなくて、つくれないんだよ。
と、心の中で静かに呟いた。