……誰?え、この人誰だろう……。同級生にはこんな人いないし、後輩にしては態度がでかい。先生にもこんなに若くてイケメンはいないはず……。
「えっと、誰すか?」
「あ、ごめんね。驚かせちゃったかな。僕は相田翔。今日から君たちの先生だよ。気軽に、あきら先生って呼んでね!左右田君と美夏ちゃんと七海ちゃん!」
びっくりした。名簿も無しに私たちの顔と名前を一致させたこの新人教師に一本取られた。
キーンコーンカーンコーン
「おっと、チャイム鳴っちゃったなぁ……もう少し話したかったけど…続きは今度ね!」
そう言って台風のような翔先生は走って行った。
「今の人誰?結構イケメンじゃなかった!?やばい!」
美夏のイケメン許容範囲はそう広くない。その範囲内に入るのだから、やはり彼はイケメンなのであろう。
「確かにカッコよかったかも……。」
「なんだ七海、浮気か!?この俺を目の前にして堂々たる浮気か!?」
「私がいつお前の彼女になったんだよ。妄想だけに……いや、気持ち悪いから妄想でもやめて。」
「俺の人権はどこに……。」
三人でさっきの先生がイケメンかどうか議論しながら、私たちは始業式が始まろうとしている体育館へ向かった。
体育館は暑かった。人口密度が高すぎてむわっとしていた。立っているだけでも辛いのに、生徒の気持ちも知ったことかとスピーチに熱が入る校長先生。「カツラずれてますよ」と誰か教えてあげてくれ。嘘だけど。きっとトイレに飛んで行って、この長いスピーチは幕を閉じるだろうから。新任の先生が自己紹介してるけど……気持ち悪い。暑くて吐き気がする。さっきのイケメン先生の自己紹介聞きたいけれど……そんなことより気持ち悪い。あぁ、まずい。めまいがする。このまま倒れそうだ……そう考えていたら、目の前が真っ暗になって私の記憶は途切れた。