私の上司






「一ノ瀬部長っ!
コーヒー置いておきますね。」



「…あぁ、ありがとう。」




とびきりの笑顔を見せる桜ちゃんに
修斗さんも爽やかな笑みを浮かべる。




「…ネクタイ、曲がってますよ?
直しますね。」



「え、…いや自分で出来るから。」



「いいですよっ」




桜ちゃんの顔が修斗さんにグッと近付いて
私がプレゼントした翔さんのネクタイに触れた。







コーヒーを入れてあげるのだって
ネクタイを…小さく笑いながら直してあげるのだって


…全部私のしていた事なのに。





ぎゅっと胸の奥が苦しくて
思わず席を立った。



『嫌な女だよね…私。』



桜ちゃんはただ、好きな人にアピールしているだけ。

私との関係も知らない訳だから。


もどかしさでいっぱいの体を
廊下の風が通る椅子に下ろした。


「…なんかあった?」


『…麻木さん。』


「ミイラみたいな顔してるよ?笑」


冗談っぽく笑いながらも
心配そうな顔で麻木さんも私の隣に腰を下ろした。


「…桜ちゃん?」


さらりと図星の言葉をかけられてしまえば
コクリと頷く以外出来ない。


「結構積極的だもんなー
狙ってる感分かるし。」


『…でも別に悪い事はしてないからさ。』



だからこそ自分が汚いように感じてしまうから。