私の上司

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「また桜の季節がやって来たよ」




私のデスクにコーヒーを置きながら松原さんはふにゃっと笑った。




『…もう一年も経ったんですね。』





ぼんやりと新入社員だった自分を想像すると少し成長した気持ち。






「花凛ちゃんも色々出来るようになったもんね。」





嬉しい言葉を掛けてくれる松原さんに笑顔を向けようとすると







「松原、アホが調子乗るとまずいから。
あんま褒めるな。」






入社当時から変わらない彼の声を背中で聞いた。





『…アホで悪かったですね。』






むぅっと頬を膨らませて彼を睨むと余裕の笑みを浮かべてくる。





「まさか自覚ないわけないよな。

この前のお前がコピーした資料、綺麗に曲がってたから。」





『……』





「あとお茶とコーヒー、どうやったらあんなに不味いもんが出来るわけ?」






『……』





「それから誤字脱字が多すぎる。
お前このままだと新入社員にも負けるぞ」




『…もう分かりましたから!』






全部否定出来ない自分が悔しい。

新入社員に教えてあげる側になりたいのに。




ため息をつくと


「まあまあそれくらいに笑」




松原さんからは気遣いのひと言が零れた。




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