私の上司









『…私梶野さんは上司として
本当に…尊敬してます。』






多分今の一言で私の答えは分かっても

優しい顔で頷きながら聞いてくれる。





『…でも私にはやっぱり修斗さんがいて。

…気持ちには答えられません。』






最後はやっぱり顔を見ることが出来なかった。




あんなに…
優しくしてくれた彼を

自分は傷付けてしまったから。





『…ごめんなさい。』








「…いいよ。
自分がきっかけでお前達悪い関係にさせといて可笑しいけど




…やり直せて良かったな。」






優しく笑って
私の頭に手のひらを乗せてくれた。






…もう優しくしないでよ。



絶対に私は泣かないって決めてたのに
頬を涙がつたう。






「…泣くなよ。
泣きたいのはこっちだって笑」






ふざけたように笑いながら私の瞳の涙を拭ってくれる。




多分、無理に笑ってるんだろうな

そう私にも分かった。






「花凛にはさ、
一ノ瀬部長がいいと思う。


お互いの欠点みたいな所をお互いで埋めてるみたいでさ。」






俺じゃダメだわ、そう言ってまた無理に笑って私を見た。






『…私、梶野さんの優しい所が本当に大好きです。




二宮梶野さんに私は勿体無いですよ。


本当に…梶野さんみたいな上司がいて良かったです。




…だから





梶野さんも泣かないで下さい。』








下を向く彼の涙を
私は拭ってはいけないと思った。