私の上司


Haruka side


"一目惚れ"


俺の恋のスタートは多分これだと思う。






柔らかい綺麗なブラウンの髪は
シャンプーの香り。



細い指先には彼女らしい
控えめな桜貝色のマニキュア。






俺を映す大きな瞳は
まだきっと穢れをしらない純粋な物で。





人の汚い所を嫌という程知ってしまった俺にとっては多分

花凛は羨ましかったんだと思う。





一ノ瀬部長と付き合い始めたって聞いた頃は
まだ自分の気持ちに整理がついていなくて

特に何とも思えずにいた。





…でも
嬉しそうに人形を映してはキラキラと輝く瞳を見てると



胸が、痛むのに気付いたりもした。






『梶野さんは本当、なんでも出来て憧れです!』





嬉しいけど
嬉しくない、そんな感想を持ってしまう。






一ノ瀬部長との関係は
どこまで進んだのかなんて考えたくもないし。







でもなんとなく、
電話を掛けても受話器から花凛の声は聞こえなくて。




体の関係さえもあるのかもしれない





そう思った時はもう
諦めたかったよ。




勝手に嫉妬出来る程
いつの間にか惚れてんだもん




Haruka side end