私の上司






小さくため息を尽きながら
オフィスに戻る前に立ち寄ったお化粧室で…


椿さんに会った。





『…こんにちは。』



ぎこちない挨拶を済ませてからその場から離れようとした私を…



「…ちょっと待って。」



呼び止めた椿さん。



「もう…修斗さんから全部聞いたんでしょ?」



小さく尋ねてくる椿さんの顔は不安そうだった。



『はい…
あっ、でも修斗さんには椿さんの事とかは一切話してませんし、
安心して下さい。』




小さく笑って見せた私は…
本当に修斗さんには話さなかったから。



椿さんがついた嘘は…
修斗さんが考えるには少し複雑な乙女心からだと思うの。



「…怒ってないの?
あんなに酷い事を言ったのに。」




椿さんの綺麗な大きな瞳から
涙が零れた。




『怒ってなんかいませんよ。
きっと椿さんには私、かないませんし。』




綺麗な顔立ち。


仕事もしっかりこなせて…


いつしか私の憧れになっていたから。





だから…



「私…花凛ちゃんが羨ましかったの。」




椿さんの言葉には驚いてしまった。




「…きっと修斗さんには貴方みたいな方がお似合いだと思う。」




優しく笑う貴方を
私も何度も羨ましいと思ったから