私の上司






「…予定あんの?
仕事なら俺がキャンセルしてやるけど…」




彼の優しさに
胸が痛む。

…なんて言えばいいの?





梶野さんと予定がありますって言えばいいんだよね?


変に嘘をつくのもおかしいもん…





『…すいません。予定があって。』




「仕事じゃなくて?」





『…近くに高校時代の友達が来てて。
お昼休みだけでも会えないかなって。』




…なんでこんな嘘ついちゃうのかな。




「仕事終わってからでいいじゃん」




『その友達忙しくて。
ごめんなさい。』





頭を下げて修斗さんの顔色を伺ってみた。

一瞬だけ零れた悲しそうな顔は私を後悔させる。





「…そいつ、男?」





空になったコーヒーの缶を捨てながら小さく問いた修斗さん。




『…女性ですよ。』





こんな大きくなる嘘、
どうしてついちゃったのかな。





「…ならいいよ。」






私を見て優しく笑ってくれた修斗さんは




「楽しんで来いよ。
少し遅れて来てもなんとかしてやるから。」







そう言って私をギュッと抱きしめてくれた。




腕の中で涙を堪えていた事、
修斗さんは知らない。