私の上司

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『修斗さんって好きな女性のタイプとかあるんですか?』



二人で歩く
帰り道

興味半分で、
少し前を歩く彼に尋ねてみた。






「仕事ができて美人で人を待たせない女」




『…嫌味ですか!』




普通のトーンで返ってくる私とは正反対の回答に

プイっとそっぽを向いた




自分が喜べる回答を期待してしまった私がバカみたい




「お前は?
理想とかねぇの?」





私の小さな怒りも軽く流した修斗さんは振り返って私に聞いた






夏も終わりかけの
少し冷たい風が頬をきる






『…修斗さんが…理想の人ですから。』






素直に口から零れた言葉に

自分で驚いてしまいそうになる






何言ってるんだろ

…本当、はずかしい






下を向いて修斗さんの反応を待っていると。








「…俺もさっきの取り消して

花凛が理想って言ってやるよ。」






頭をぽんぽんと撫でてくれる修斗さんの大きな手に自分の手を重ねた






『…私、今が一番幸せかも!』






冗談半分で修斗さんを見上げると





「…ばか。

これからだろ」






ぎゅっと抱きしめてそう言ってくれた







温かい腕の中で
小さな幸せを掴むような気がして







お互いの理想のカタチを

しっかり彩っていきたいって思ったよ




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