廊下に出た途端に顎を片手で掴まれた。


グイッと半ば無理やり見た彼の顔はやっぱり怖い。



「…お前さぁ何なの?」


またあの強い視線をぶつけてくる。


でも…


『何なの?はこっちのセリフですよ!
急に彼女とか言われても実感湧かないし
勝手すぎませんか?』


少しキツめの口調で一ノ瀬さんに負けないように言い返した。



私をキッと睨むと下を向いて小さく舌打ち。



この時点で心は半分折れてたりする私。




すると壁に片手をついて、
私をより見下ろすような姿勢で彼が口を開いた。




「…お前に拒否権ねぇ事くらい分かるよな?
ここの会社の取締役、俺の親父なんだよ。」



だんだん大きくなる声のボリューム。



「つまり、お前なんて簡単に会社のクビ切れるんだよ。
切られたくなかったら言う事聞け。
分かったな?」



『……』


「分かったな?」

これ以上黙っていると本当にクビを切られそうで。


『…はい。』


ようやく私が首を縦に振ると小さくため息をついて、



時間とらせんなよ、
そんな風に私に聞こえるように呟きながらオフィスに戻って行った。








『…あんな人、
大っ嫌い!』




大きな声でそんな事言えない私は

トイレで小さく呟きながら壁をコツンとつま先で蹴った。