私の上司







「俺は受付してくるからお前はロビーで待ってろ。」






高級ホテルに足を向けた修斗さんの背中を追いかけて



受付をしている間、
ロビーで腰を下ろした。







待っている間
修斗さんが話してくれた事のあらすじを振り返ると



なんだか胸の奥が凄く苦しくなった。








…私なんかで大丈夫かな?



なんて弱気になっちゃう自分が嫌い。






「…部屋とれたから。」







キーを顔の横に掲げながら小さく微笑む彼は

私のきっと知らない事だらけ。








お父さんと比べられる事を苦痛に思いながらも


仕事一筋で真面目に働いてきた彼には頼るべき人が必要だったんだね。






『修斗さん、私…』






「ん?
あぁ、別に今日は襲ったりしねぇから安心しろ。」






悪戯っぽく笑いながらも頭をぽんぽんと優しく撫でてくれる彼は





恋愛に不器用な私のペースに凄く合わせてくれて。








『…すいません』





「謝んな。」








心の準備だって、
ずっと待っててくれるのはきっと修斗さんだからだよ。








そんな彼に支えられてるのは私の方なのにね。






…だから







『ホテルにまで来て…何もしないなんて言いません。』






自然と震えてしまう肩や足にグッと力をいれて

修斗さんを見た。








修斗さんは一瞬驚いたような顔を見せたけれど

すぐに真剣な顔で








「…ん。優しくするから。」









そんな私の肩を抱き寄せながら
耳元で小さく囁いてくれた。