『ね!意味分かんないでしょ?!』



私の感情に満ち溢れた愚痴に苦笑いを浮かべる麻木さん。






結局あの後、
じゃーな、って言って一ノ瀬さんは


私の沢山の資料と

固まったままの私を置いてオフィスを出て行った。




で、イマイチ状況が分からないまま帰宅した私は、



朝、事の重大さが分かった瞬間
隣のデスクにいる麻木さんへの愚痴が止まらないという状況。







麻木さんは私と同じように入って来た…いわゆる同期だけど

仕事の出来具合は私とは比べ物にならないほどしっかりこなす人。



オマケにこんなに綺麗な顔立ちをしてるから女性からの支持は熱く、
もう5人以上から告白もされてるみたい。


でもそういう所を全く鼻にかけないのが
私は好き。




「でもいいじゃん。
一ノ瀬さん、良い人だと思うよ?」


『いやいや!
全然爽やかじゃないんだよ!
もうね…

目が鬼っていうか悪魔っていうか…』




私が一ノ瀬さんの睨み顔を真似て見せると麻木さん爆笑。




こっちは真面目に悩んでるのに!




鏡見てみろよー、そういう麻木さんをマジで睨みながら手鏡をかざすと、

私の睨み顔の奥に、

本当の睨み顔が鏡に写った。






「それ、誰の真似だよ。」




後ろから聞こえてきた冷たい声に思わず背筋が凍った。



「…まさか、俺じゃねぇよな?」




心の中で
その顔です、と呟きながら
最悪に機嫌が悪い一ノ瀬さんに腕を引かれ廊下に出た。