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「おはよう。」




部下にいつもの笑顔を向けながら出勤。





花凛の方にチラリと視線を向けると麻木と仲良さげに話しているのが分かる。





嫌な感情を押し殺しながら鞄から資料を出すと俺の目に入るウサギ。






…やっぱイタくね?






なるべく見えない所にウサギを座らせてから自分のデスクを見渡す。




…アウトだろ。






溜息を尽きながらウサギを鞄に入れようとすると、


花凛と梶野が一緒に廊下に出る所が見えた。








"約束ですよ!"







花凛の笑顔が脳裏をよぎって…
そっとウサギはそのままデスクの隅に座らせた。







それから自然と、
花凛と梶野の後を追いかける自分がいた。







俺が廊下に出る頃にはもう梶野は花凛から離れてて、



気が抜けたように立ち尽くす花凛の後ろに立った。






「なに男と二人で喋ってんだよ。」








俺の問いかけに明らかに動揺する花凛。






…なんでだよ。

動揺する理由があんのかよ。







なんでそんな言い訳みてぇな言い方なんだよ。







俺は…
どうしてもっと素直になれねぇんだろ。






こんなに曲がったネクタイ、


普段の俺なら直ぐに結び直すのにさ。








こんな事で嫉妬する小せぇ男じゃないって…






本当は、デスクにウサギ飾った所だって見せてやろうって…。









もういい、そう言ってその場を去っても花凛は追いかけて来ない。








トイレに入って溜息を尽きながら鏡に映った自分を見た。






「情けねぇ…」









頬を伝う雫は…涙なんかじゃないって信じたかった。





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