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『…ど、どうしてそんな質問を?!』



明らかに可笑しい態度の私を怪訝そうに見つめながら口を開く梶野さん。



「…いや?昨日何度も携帯に電話掛けても出なかったんで何処か行ってたのかな、とか。」



なんだ…


見られてた訳じゃないんだ。





ホッと肩の力を抜くと




『…ちょっと忙しくて。』





一生懸命嘘の笑顔を向ける。





「…絶対なんかありましたよね?」





…やっぱ鋭いよこの人。



私の嘘なんて見破られてるかも…!




『…何でもなんですよ?』




「ふーん、まああんたの事情なんて芸能人の熱愛報道並にどーでもいいんで別に関係無いですけどね。」


じゃあそんなに掘り返そうとしないでください…


本当に何もありませんよぉなんて、笑って見せながら梶野さんの背中を見送った。






…今度こそ安心できると思ったその時。









「なに男と二人で喋ってんだよ。」






ハッと後ろを振り返ると明らかにそうに私を見下ろす一ノ瀬さんの姿。



…紺のネクタイは朝私が結んであげたから少し曲がってる。




『あっあの、梶野さんとはその…お仕事の話をしてただけで、』





「…んで?なんで廊下出る必要があんだよ。」






『…ひ、秘密会議?』





ちょっとふざけて笑ってみせても彼の口角はピクリとも動かない。





「…バカにしてんのかよ。もういい。」






そう言うとスタスタと歩いて行ってしまった。






私が小さく溜息をつくと



「お疲れ。」


そう言って麻木さんが缶コーヒーをくれた。




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