「ソファーにでも座っとけ。」






そう言ってキッチンの方へ向かう一ノ瀬さんをパタパタと追いかけてみた。






『夕食、一ノ瀬さんが作ってくれるんですか?』







後ろからひょっこり顔を覗かせて、
いたずらっぽく笑って見せると






「…お前が作れ。」







そう言ってキッチンに私を立たせた。






『えー!私?
…何がいいかな。』






冷蔵庫を開けてあたふたしているとソファーから聞こえてくるリクエスト。






「ハンバーグが食いてぇ。」






ボールにお肉や玉ねぎなどを用意して。






『一ノ瀬さんお肉混ぜて下さいよー!』







私がお肉の入ったボウルを見せると意外にすんなり立ち上がってくれた。





一ノ瀬さんの前で少しお手本を見せるとキュッと腕まくりしながら
一ノ瀬さんもお手本通りにやってくれた。







少しぎこちない彼の作業の横で卵のスープを作っていると、




なんだか凄く幸せな気持ち。







そんな空気の中、


時々聞こえてくる舌打ち。





『どうしたんですか?』





私が一ノ瀬さんを見ると





「…肉が手にくっつくんだよ。」






なんて言いながら自分の手を見ていた。






ふっとこみ上げてきた笑いを隠してたつもりなのに一ノ瀬さんにはバレてしまって。







「…なんだよ(笑)」






一ノ瀬さんも眉を下げて笑いながら片方の手で私のおでこをこずいた。