結局花凛は俺にこれを買って欲しいなど言わずに店を出た。




「人形は?」





先まで眺めていたウサギの人形に目をやると、



『大丈夫ですよ。付き合ってくれただけで凄く嬉しいですから。』



そう言ってまた眩しすぎる笑顔を向けられた。





二人で会社に入ると花凛はじゃあ!って俺に手を振りながら オフィスに戻って行った。



秘書が俺に近寄ってきて資料を渡してきたけど




「用事があるからデスクに置いといて。」


そう言ってデスクを指差し、またオフィスから出る。




エレベーターに逆戻りする俺は、
あの人形の事しか頭になかった。

…花凛に。






再び戻ってきた雑貨屋は女子だらけ。



30にもなった俺が一人で入るのは少し、
ためらいがあったけど



棚にまだ飾られてあるウサギを見つけるとすぐにそれを手に取った。




凄く嬉しそうに花凛が眺めていた品は

3000円。


やっぱり彼女なりに遠慮したのだろう。





その、やっぱり俺が持ってレジに並ぶのは可笑しいウサギをレジに出した。





「プレゼント包装してください。」



プレゼントを無駄に強調して。



そう、これはプレゼント用なんだよ。
俺用じゃねぇからな。




みたいなバカな言い訳を心の中で唱えながらもう少しで火が出そうな顔で店を出た。





なんで俺がこんな恥ずかしい事しなくちゃなんねぇんだよ。






一人溜息をついながらプレゼントを眺めると先の花凛の顔を思い出して




自然と頬が緩んだ。



.Shuto side end