『あの…一つ聞いてもいいですか?』




メインのお皿にナイフとフォークを向けながら遠慮がちに一ノ瀬さんに尋ねた。




「…何?」





彼もまた、お皿から目を離さずに私に答えた。





『…どうして私を彼女にしたんですか?』






ずっと疑問だった。





一ノ瀬さんだったら、

もっと上のトップクラスの女性とだって付き合えたはず。





それに私は始め、一ノ瀬さんとのお付き合いを嫌がってた人なのに。




どうして…
そんな面倒な私を選んでくれたの?






一ノ瀬さんは何かを考えるように下を向いていたけれど、







「…どうでもいいだろ。」






その一言だけを私に言うと、
また静かに食事を再開させた。






…何があって、

どうしてこんな事になったのか。




その全てを知るまでにはまだ時間が必要なのかな。





そんな事を考えながら



『やっぱり美味しいですね。』



あまり先の事には触れないように彼に笑顔を向けると、






「…高いコースにしといて良かっただろ。」






彼も満足げに笑いながら私を見た。






その笑顔を見ていると、
理由なんて本当にどうでもいい事に思えてきてしまって。







彼が好きならそれでいい。








なんて事、考えちゃう私はだいぶ深い所まで恋に落ちてるみたい。