『どのコースにします?』


私がメニューを一ノ瀬さんに向けると目も向けずに即答。


「一番高いやつ。」




…嫌な奴。


いくら出世者だからって
完全に嫌味じゃん。




思わず口から出そうになった言葉を飲み込んで店員さんを呼んだ。




「一番高いコースを二人ぶん。」



店員さんにまで偉そうに言う一ノ瀬さんに思わず倒れそうになる。




『ちょ、店員さんにまでそんな偉そうな頼み方しないで下さいよ!

…すいません。』




想像通り店員さんは思いっきり苦笑い。




そんな私達を見て張本人は鼻で笑った。





『てゆーか、こんなに食べれませんよ!』




コースメニューを眺めてから一ノ瀬さんを睨む。

前菜にスープに魚料理にお肉料理にデザートって完全にディナーでしょ。




「は?
お前のそのデカイ体なら余裕で入るから安心しろ。」



そう言って爽やかにミネラルウォーターを口に含むこの人は女性への気遣いって物を知らないのか。




半ば呆れながら一ノ瀬さんを見ると目が合って彼の口角が上がった。





「怒ってんの?」




『当たり前です。』





「だってデブだろ。」





『痩せてはないかもしれませんが、
デブじゃないです!』




「それをデブって言うんだよデブ。」





『……』





なんで最後には私が黙る羽目になるのよ。







下を向きながらムーっとしていると店員さんがちょうど美味しそうな前菜のお皿を持ってきた。