『…おはようございます。』




「……」




お昼前、まとめた資料を一ノ瀬さんに持って行くと私を見て眉をひそめる一ノ瀬さん。






『…あの、何ですか?』


「…いや、それはこっちのセリフだろ。」




私がキョトンとしながら彼を見つめていると
一ノ瀬さんは片手で顔を覆いながら席を立った。




「…ちょっと着いて来い。」



『…えっ?!』




また無理やり腕を掴まれてオフィスを出て廊下に出た。


廊下は誰もいなくて静か。




「…今日のお前見て社内の奴らがなんて言ってるか知ってんのか?」



背中を向けたまま私に尋ねる一ノ瀬さん。




『…知らないです。』

…本当の事だから。





そんな私の回答に一ノ瀬さんは大きなため息をついた。





「……可愛いって。」




『…へっ?!』




びっくりし過ぎて変な声が口から飛び出した。




「…明日からそんな顔してくんなよ。」




『なんでですか??
いいじゃないですかー!』


社内での噂が嬉し過ぎて
テンションが上がる私は一ノ瀬さんの肩を掴みながら笑った。






そんな私を睨む一ノ瀬さん。



…え。





「…お前どんだけ鈍いんだよ。
いいか、お前は俺の彼女なんだから
俺以外に可愛いとか思われなくていいんだよ。



…嫉妬すんだろ。」






そんな風に顔を赤くしながら片手で顔を覆う一ノ瀬さんは、


なんだか新鮮で。



最後のひと言は
私の気持ちをより高めた。