瑞希お兄ちゃん達のやり取りを、誰も止めない。
ただ立ち尽くし、ハラハラした様子で、何もできずにいた。
そんなこともあって、田渕の部下達はさらに調子にのる。
「いいから、座れよ!社長の隣が開いてるだろう?」
「やめてください。仕事中です。」
「他にも店の奴はいるだろう!?客をもてなすのも、接客の仕事だろう!?」
「ただでさえ、お前、仕事の後も付き合わないのによ!オラ、こい!」
「離してくださいっ・・・!」
瑞希お兄ちゃん腕をつかみ、どうにかして座らせようとしてる社長の部下。
それに懸命に耐える瑞希お兄ちゃん。
ううん、耐えるじゃない。
あの目は――――――――
(我慢してる時の目だ・・・・!)
聞こえてくる会話に、ショックを受けつつも、体は自然に動く。
「ちょっと、坊や!」
「坊や、今、『瑞希お兄ちゃん』て言った・・・?」
「もしかして、君は瑞希君の知り合い・・・!?」
「・・・・・・・・カズ君さん。」
ギョッとする三人に、その中でも瑞希お兄ちゃんと同じ制服を着ている人に聞いた。
「半年前から・・・・・・・・言い寄られてるんですか?」
「へっ!?あ、は、はぁ・・・・半年前からですが・・・・?」
「具体的に、どういう要求をされてるの?瑞希お兄ちゃんは、きちんとお断りしてんだよね?」
「あ・・・・まぁ・・・早い話が、自分の愛人になってお店をやめてくれってことですね。男同士ってのもあれですけど・・・田渕様は男も女もいけるんですが、癖が悪いというか、あきっぽいというか、自分の物にしてもすぐ捨てちゃうという性質の悪さで~・・・・。だから、瑞希君も何度も丁寧に断ってるんですが~というか、瑞希君はノーマルで女の子が好きだから、男に抱かれるのは嫌だって言ってるんですが、効果がなくて~」
「なるほど、いい度胸ですね。キャッチ&リリース前提の愛の要求ですか・・・!?」
「キャッチ&リ・・・!?あ、あの!やっぱり君は、瑞希君の―――――――!?」
「わかりました。」
(それだけわかれば、十分。)
何か言おうとするカズ君さんに、手を振って制する。
前髪を止めたヘアピンを外す。
もしもの時のために。
さっき使ったトンファーをいつでも使えるようにする。
もしもの時のために。
そして、しまったバンダナで口元を覆う。
うん、これはもしもの時のためじゃない。
通常運転のため。
(マスクあっての『凛道蓮』だから・・・・・!!)
バンダナを首の後ろで縛りながら、一直線に瑞希お兄ちゃんの元へと進む。
近づくに、嫌がる瑞希お兄ちゃんの声が大きくなる。


