「大丈夫かな・・・」
「イケるゆーたから、イケるんちゃうかなぁ~!?うっはっはっはっ!」
私の独り言に、グラサンが返事をする。
「あの兄ちゃんもやけど、自分も頑張ったなー!?うはははは!」
「あ、いえ、私は~・・・」
「ほれ、はよぅバックレるで!こっちや!」
「え!?」
そう言うなり、腕をつかんで引っ張られた。
「あ、あの!?」
「うはははは!あのままあそこにおったら、『第一発見者』やー!『お前が邪魔したおかげで怪我した』でー!?って、後から面倒やん?」
「それも・・・そうですが・・・」
(確かに、あまり目立たない方がいいからな・・・)
そのままグラサンに腕を引かれる。
彼は、人気のある表まで私を誘導してくれた。
「ここまできたらええわ。」
「あの、あなたは―――――――」
2度助けてくれた人。
話しかけようと試みるが。
「あ!?いたいた、お嬢ちゃん!お客さーん!探したわよー!?」
「運転手さん!?」
タクシードライバーが現れた。
息を切らしながら近寄ってくる。
「急にいなくなって、心配したわよ!?」
どうやら、私を探していてくれたみたいだった。
「うはははは!なんや、知り合いかいなー!?」
「え?ああ、そうともいえますがー」
「せやったら、安心やな!気ぃ帰りーや!」
「えっ!?」
「ほななぁ~!」
私に笑いかけると、しっかりとつかんでいた手を離す。
そして、何事もなったように立ち去るグラサン男。
(また・・・何も言わなかった・・・?)
普通なら、一度会っているなら、それらしいことを言うのに言わなかった。
(覚えられないほど、印象が薄いのかな・・・?)
「あの――――――・・・・・!」
一瞬、声をかけようかと思ってやめる。
(菅原凛でいる時は、大人しくしてた方がいいんだもんね・・・)
占いに従い黙る。
やることはやった。
ちゃんと助けた。
それ以上のことは控える。
だから・・・・・・・名前のわからない男を静かに見送った。


