彼は高嶺のヤンキー様2(元ヤン)




ご機嫌でしゃべる男の子。

改めて、その姿を見る。

オールバックの黒髪を、カチューシャで止めている。

服も、なぜかブレザーの制服ではなく、ジャージだった。

それも、学校指定ではない市販ジャージの上下。

そこへ、値引きしたというサングラスもかけているので怪しい。





「うはっはっはっ!いや~ほんまラッキーだったでー!!」





そんな男子に、私と周りは完全に飲まれる。

呆然と見ていれば、ふいに男の笑い声が止まる。



「それはそうと、ねぇーちゃん!これ落したんか!?おっちょこちょいやな~!!」

「あ・・・これは・・・」

「ほら!あっちにも、こぼれとったで!?ほれほれ!!」



そう言って差し出してくれたのは、土で汚れていた教科書と辞書。





「あ・・・?」




かすかだけど、土を払った後があり、彼の袖口が汚れていた。





(汚れを・・・・拭いてくれた・・・?)




「あ・・・・ありがとう・・・・」

「ええねん、ええねん!早退の途中やろ?き~つけたな?」

「はい!ありがとうございました・・・!」






私が全部荷物を拾うまで見届けると、軽く手を振って立ち去る男子。

そして、気づく。




(しまった!助けてもらったのに、名前を聞いてない!)





今なら、まだ間に合う!お礼を・・・・!?






(やめよう。)





呼び止めようとしてやめる。



今ここで、彼に名前を聞いちゃダメ。


だって・・・






「なんだよ、あのバカでかい奴・・・?」

「勝手なことして・・・・」

「見たことないけど、誰?」

「さぁー・・・」



(できるわけないか・・・)






親切な少年を見ながら、コソコソと周りの奴らが話してる。

私と話をすれば、どうなるか。






(きっと・・・吉田さんみたいに、知らないだけなんだ。)





だから彼も。

誰かに教えられたら、きっと・・・






(次会う時は、私をいじめる側なんだろうな・・・・)






彼のおかげで泣かなかった。

嬉しかったけど、切なくなった。