ご機嫌でしゃべる男の子。
改めて、その姿を見る。
オールバックの黒髪を、カチューシャで止めている。
服も、なぜかブレザーの制服ではなく、ジャージだった。
それも、学校指定ではない市販ジャージの上下。
そこへ、値引きしたというサングラスもかけているので怪しい。
「うはっはっはっ!いや~ほんまラッキーだったでー!!」
そんな男子に、私と周りは完全に飲まれる。
呆然と見ていれば、ふいに男の笑い声が止まる。
「それはそうと、ねぇーちゃん!これ落したんか!?おっちょこちょいやな~!!」
「あ・・・これは・・・」
「ほら!あっちにも、こぼれとったで!?ほれほれ!!」
そう言って差し出してくれたのは、土で汚れていた教科書と辞書。
「あ・・・?」
かすかだけど、土を払った後があり、彼の袖口が汚れていた。
(汚れを・・・・拭いてくれた・・・?)
「あ・・・・ありがとう・・・・」
「ええねん、ええねん!早退の途中やろ?き~つけたな?」
「はい!ありがとうございました・・・!」
私が全部荷物を拾うまで見届けると、軽く手を振って立ち去る男子。
そして、気づく。
(しまった!助けてもらったのに、名前を聞いてない!)
今なら、まだ間に合う!お礼を・・・・!?
(やめよう。)
呼び止めようとしてやめる。
今ここで、彼に名前を聞いちゃダメ。
だって・・・
「なんだよ、あのバカでかい奴・・・?」
「勝手なことして・・・・」
「見たことないけど、誰?」
「さぁー・・・」
(できるわけないか・・・)
親切な少年を見ながら、コソコソと周りの奴らが話してる。
私と話をすれば、どうなるか。
(きっと・・・吉田さんみたいに、知らないだけなんだ。)
だから彼も。
誰かに教えられたら、きっと・・・
(次会う時は、私をいじめる側なんだろうな・・・・)
彼のおかげで泣かなかった。
嬉しかったけど、切なくなった。


