幼なじみはアイドルの先輩

「これが最後ですけど、選抜祭は順位発表のみでいいですから出させてください」


愛結の力のない目力が逆に俺の判断を鈍らせてしまう。


普通はどんな理由であれ病室でおとなしくしてろと説得するはず。


だが…………。


「それは、お父さんお母さんにも話をしたのか?」


「昨日しました。歌とダンスはもう無理だけど、ファンの前には立ちたいって。担当の先生らと話し合いして、当日ギリギリまで会場でメンバーにわからないところで点滴しながら待機して、呼ばれたら行きます。後は先生らの判断待ちです」


誰に習ったのかは知らないが、外堀を埋められてしまったなあ。


「わかった。お父さんお母さんと話をするよ」


「お願いします。やっぱり長く起きてると辛いですね。ちょうど眠くなってきたので寝ます」


俺がボタンを押してベッドを調節した。


選抜祭に出るって……。


身体丸めて咳き込んでるのに、どうして自分から命を削る行為をしようとしてるのか。


もういいじゃないか……。


愛結の背中をさすりながら、何度この言葉をいいかけたことか。