幼なじみはアイドルの先輩

「大丈夫だよ。あたしにもしものことあったら亨おじさんがとっくにママに連絡してるって」


「うん……」


ママは言葉に詰まってそれ以上深く追及はしてこなかった。


他にママに聞かれたのは、おととい生返事したことばかりだからちゃんと答えたよ。


細かく聞いてくるのはやっぱり娘を心配する母なんだなって。


「そろそろ時間ね」


質問攻めをしたママがテーブルに置いてたスマホで時間を確認した。


コーヒーをおかわりして、ケーキまで頼んじゃった。


「出すからいいよ」


「ありがとうございます」


伝票持って1階に降りるママについていきながら、来年のお正月も帰って来れたらと強く思った。


でもね、ママには誰かパートナーが出来ればと私は諦めずに想い続けますからね。


「よろしいですか?」


ママが会計を終わらせ一緒に出ようとした時、マスターに呼び止められた。


「なによ〜。急いでるんだから」


「ごめん。実は、娘さんに」


「私ですか?」


急なご指名は一体……。


マスターが一旦店の奥に引っ込んですぐさま出てきた。


「サイン色紙!?」


ママと声がかぶっちゃった。


「あの、金曜日いつも観てるんです。その……、よろしければ」


「いいですよ」


芸能人スイッチに切り替わるのが早いわ。


サインの練習はしたけど、実践するのは初めてだ。


でも、身体に叩き込んであるから難なくサインを書けた。


「やったね」


「やったよ!」


記念すべき第1号はママの同級生でした。


マスターは最後の最後まで私をドキドキさせてやりますねえ。


ママには内緒でお忍びで来ちゃいそうだ。