幼なじみはアイドルの先輩

「ああ。わかっーー」


今度はキャーキャーうるさい声が聞こえたと思ったら電話切られた。


電話してる時ぐらい手を休めよな。


「……すみません。噂の水原から仕事の電話でした」


「彼女、芸能活動と普通の会社員のような仕事もやってるんですか？大変そうですね」


「ああ、水原は地元の進学校出身で大学を蹴って加入してくれたんです。器用な子です。普通に業務をこなせてーー」


おやおや？


俺は何か可笑しいこと結子さんに言ったか？


「ごめんなさい。私の勝手な先入観が入っちゃって。今、水原さんのこと話してる時の社先生が主人とよく似てて。ごめんなさい」


つまりは父親のように思えたと。結子さんはそう見えたことになるのか。


父親とバレない芝居はまだ取り組んでないなあ。


「私はメンバー全員を娘と思って指導してますから、そう見えたんでしょう」


オッサンがこんなセリフをよくもまあ恥ずかしくもなく言えたもんだ。


父親とバレない芝居を極めないと、いつまで経ってもこんなくさ〜いセリフを用意しないといけない。