幼なじみはアイドルの先輩

涙を流す暇もない短いスピーチだった。


意表を突く意味では成功とは思うけど。


気を取り直して次はケーキ入刀じゃん。


これは近くまで寄って撮影しますよ。


よく見かける一口サイズのケーキより大きめに切り分けて新郎に食べてもらうのを文もやってのけたよ。


努さんも精一杯口を開けるんだけどなかなか難しいようで口の周りがクリームでべったりだった。


でも、いいもん撮影出来たよ。


「ここでお色直しのため新婦様は退場になります」


努さんはここでお友達と歓談か。


まさか、人目を忍んでゲームはないよね。


「新婦様からサプライズでお2人にエスコートをお願いしたいとの申し出がありましたので発表します。新婦様のお母様と友人の水原様お願いいたします」


うわ〜、文さん、私かよ。


撮影したのチェックしたかったのに。


「杏ちゃん、久しぶりね。さっきのスピーチ短くてよかったよ〜」


引っ越して以来初めて文のママと会話したけど、髪型がロングヘアーのままだった。


「お久しぶりです。こういうのって友人はいらないはずなんだけど」


「この子がどうしてもって聞かないのよ。誰に似たんだか」


「ごめんね〜。後でプレゼントあげるから機嫌直して」


「……あたしは上機嫌ですよ。エスコートしますから早く行きましょう」


モノに釣られる現金な私です。


でも、ただ食べて飲んでるよりはちょっとした参加も悪くないね。


後は無事滞りなく終わってほしい。