~土方歳三~


大政奉還が行われ

幕府の使者が屯所に来た


「七重さん?」


使者が、お茶を出す七重に声を掛けた

首を傾げる七重に

「ほら、川原で倒れていたのを助けられただろう?」

「……ごめんなさい、わからない」

土「すみません、少し頭を打ちまして
記憶が曖昧になっております
お許し下さい」

「さようか、難儀なことだ
それで、新選組が預かっておるのか」

土「はい、日常生活に支障は、ありませんが、なにせ町人が色々と噂をするので…」

「これだけの容姿だ、噂にもなる
記憶は無いだろうが、息抜きに遊びにおいで?歓迎するよ?」

「えっとぉ」

「はははっ ひとりが不安なら、土方も誘うか?」

この気さくな使者を警戒して、俯く

土「すみませんが、今は、まだ…」

「そうか、無理にとは言わぬ
思い出してからでもいいさ、待ってるよ」

「ありがとうございます」














使者が帰った後、七重と近藤さんの部屋へ

「そろそろいんじゃねぇか?」

近「そうだな」

「なんですかぁ?」

近「大切な話をしたいんだ
一緒に出掛けようか」



弘吉と山崎、総司、近藤さん、俺

まるで護衛をするように、七重と町へ

ヒソヒソと町の声がする


山崎は、屋根上


七重は、弘吉の着物の袖を摘まみ歩く


目的地は、川原





そこで、俺が渉を斬ったこと

総司を庇い怪我をしたこと

先見の力のことなど


ゆっくり話をしたかった




あの場所なら、七重の心も落ち着くだろう