渉未に追いつかなくて、置屋まで来た

中が騒がしくて、しまった…

と思いつつ、扉を開ける


「あら、土方の旦那?どうしたんだい?」


女将が普通に接してくる

渉「さっき、川に落ちた所を見られてさ
これ、借りたんだ」

「あぁそうかい!まぁ上がりな」



渉未が着替えに行ってから、女将が話し始めた



「ここでは、桜と渉が双子なんだよ
桜が死んだとしても、渉が帰って来るのは当然だろ?
身請けが上手くいってれば、普通に幸せだったのにねぇ
生娘だから、貰い手はいるだろうけどさ」


「女将……俺、生娘じゃないから」


髪を手拭いでガシガシしながら、部屋に入てきた


土「そういや、熱は?」

渉「ありません!元気です!」


しばらく放心状態だった女将が、戻った


「いつ!?どこのどなたさんや!?」


「んなこと気にすんな!!」


「責任とらせるわ!!」


「死んだよ」


「……」


「結構、前の話だから…気にすんな!!」


「あんたの初めては、うちと椿が決めるって言ったやろ!!」

「仕方ねぇだろ!!終わったことを言うなよ!!」

「好きな人やったんか?」


女将のその言葉に、渉未は首を横に降った


「体に傷はつくるし、いうこときかんし
本当に、この子は……
谷口先生が知ったら怒るで……
なんで、好きでもない人に……」


「さあな」



そう言って、ニコリと女将に笑って見せる




渉未の髪を触りながら



「あほ」

女将が呟いた



「その言葉、好き」




山崎がよく言う言葉を愛おしいように




〝山崎が好き〟





そんなふうに聞こえた




「土方さん、明日ぜんざい持ってくよ!
羽織の御礼にさ!いいだろ?」




「あぁ」