~克己~



渉が我慢していることは、わかっている


本当は、帰りたいんだろ?


〝お前らなんか嫌いだ〟


俺には、好きだと聞こえたよ





毎晩、寝ながら泣いているのを知っている

俺が涙を拭いてるから、お前は気づいていないだろう




今まで、1度も夜に布団を抜けたことのない、渉が俺の手をそっとのけて出て行った


寝ているふりをして、見逃す


帰りたいなら、帰らせてやろう





え?






しばらくして、そっと俺の手の中に戻ってきた




「渉…」

「ごめん、おこした?」



「新選組のところに行ったのかと……」



本音を言った



「克己のそばにいるよ」






完全、実力主義の俺達の中でも

渉は、簡単な技は見るだけで覚えた

難しい技も、少しコツを教えると出来た

こんなに才能のある人材は、そういるものではない

頭の俺をしのぐ強さだ



武術とは、違い


やはり、女


弱い生き物なんだと思う



好きな奴よりも、確実な居場所

自分を好きだという、俺を選んだ



「渉…いいのか?」

「七重……本当は、七重なんだ」



双子と入れ替わってから、渉が土方の刀で命を落としたこと

今までのことを話してくれた



そして…



「克己の子供がいるみたい」

「本当か?」


ガバッ


慌てて起きて、部屋に灯りをつけた

渉、いや……七重は、にっこりと笑い



「克己の子供だよ」



初めて笑ってくれた



「でかした!!七重!!」




有頂天!!



家族のぬくもりを知らない俺は

本当に嬉しかった

七重と俺が、親になる

家族なんだと、そう想うと涙が出た


クスクスと笑い続ける七重に

初めて口づけをされた




「克己、そばにいてね」




「当たり前だ!!」






こんなに愛しいと想う存在は、七重だけ


そばにいる

ずっと、そばにいるからな!!




朝まで、喜び合った




俺は、家族という宝物を得た