自分で思っている以上に、俺は渉が好きなんだと、知った


夜中、報告に戻った山崎にも渉のことを話した


「よかった……生きとったんですね」



山崎も嬉しそうだった




「下がって休めよ」


「はい!ありがとうございます!」




大阪ぜんざい屋で浪士を取り押さえた

渉のおかげだ







弘吉と、渉が再会したのは、年が明け

しばらくしてからのこと






山南さんと弘吉が、島原に行った帰りだった





弘吉の目の前に、茶色を身にまとった渉が

立ち塞がり


「旅に出ると、帰れなくなるもんだな」


「帰って来いよ!皆、待ってる!
ずっと、探してたんだぞ!!」

「弘吉… 山南さん… 
旅には、出ない方がいい……
俺みたいに帰るところがなくなる」

「何言って……渉!!行くな!!おい!」



ということがあったらしい













何かある









そうは、思ったが



全く予想出来なかった


『 江戸へ 旅に出ます 』


山南さんが、そんな計画を建てていたなんて

片付けられた部屋を見れば、随分前から計画していたことがわかる


だが…


山南さんが、苦しんでいたことに


誰も気づかなかった





渉が、山南さんを止めに来たのに







脱走して、総司に連れられ


屯所に帰ってきた




「弘吉、旅に出ても、帰ってこれたよ」




そんなことを笑って言った



潔く、切腹して
山南さんは、また… 旅に出た



今度こそ、帰ってこれない旅に



こんなに、愛された人が

皆の心の拠り所だった人が

誰にも、胸の内を話さず


逝ってしまった






渉も弱音を吐かなかったな

よく泣いてたけど


いつも、ひとりで背負い込んで


今も…… 苦しんでいるんじゃないか?

心の中で、助けてって叫んでいるんじゃないか?


渉を取り返したい

そう想うほど、連れ去られた日の姿が

瞼に蘇る






助けてやれなくて……ごめんな