この時間、たいてい山崎さんは、怪我人の治療の為、水を汲みに行っている



「大丈夫か?」


井戸に着く前に、土方さんから声を掛けられる


「聞いてた?」

「すまん……」


正直だな



「いつから?やってる?」

「去年の七夕から、少しづつ」


ここに泊まった日


「そうか」



俺は井戸に向かおうとしたが、土方さんに

手を引っ張られ、なんか…真っ暗


抱きしめられてると、理解したのは

「いでぇ」

土方さんの手が、傷の上に当たったから

「え?」

「背中…触るな…ててててっ」


土方さんが慌てて退く


もうやめよう


もう誰とも関わらないようにしよう


何度思っても、ここに来てしまうのは



土方さんが、いるからだと思う


「あははははっ 冗談だよ」


心配させたくないから、こんな嘘もつく

「なっ!! お前!!」


「弘吉と、話してみてよ!
弘吉が選ぶ道なら、俺は応援する!」


ちゃんと笑える


土方さんがいるから


生きることも、悪くないかもと


思ってしまう


ひとりになると、どん底にいるようだけど


慶太郎や弘吉だって、土方さんに惚れて

新選組に入りたいのだろう





土方さんに斬られた日




死ななかったのは、弘吉の背中を押すためだったのかも


3ヶ月経って、未だ治らない背中



「渉…ありがとうな」

「いーえ、団子で結構です」

「またかよ!」

「沖田と弘吉の分もな!!」

「はぁ!?」



なんとなく… 楽しくて


山崎さんとこ行くの忘れてた



そのまま置屋に戻ると、女将と椿に

大きなため息をつかれた



「ごめん……明日また行く」