私はしばらくの間、時が経つのを忘れていた。
彼はドリブルをしながら私の方へゆっくり寄ってきた。
「何してんの?」
彼は低めで少しハスキーの声だった。
「あ……えっと帰ろうと…」
あなたを見ていましたなんて言えるわけがない。
「もう帰んの?」
彼はドリブルをやめて私にパスをした。
これでも中学の頃はキャプテンをやっていたから、いきなりのパスでも取ることができた。
「え、帰りますよ?」
私はいつもの癖でドリブルをした。
彼はそのボールを取ろうと手を伸ばしてくる。
それをかわしてゴールへ向かう。
そしてシュートをきめる。はずが…
「あっ」
いつの間にか手元にボールが無くなっていた。
彼は取ったボールでドリブルをし、シュートをきめた。
フォームの綺麗さにみ惚れてしまう。
彼はニヤッと笑って、
「俺の勝ち」
と、私の顔の前でピースサインをつくった。
私は思わずドキッとしてしまったんだ。
汗で少し濡れた髪と笑顔がすごくかっこいい。
「フォームとかすごく綺麗ですね!」
「さんきゅ。お前のドリブルもなかなかよかったよ。バスケ部入んの?」
「あ…いえ!部活はやらないつもりです!」
危うくはい!って答えそうになった。
「え!もったいねーなー上手いのに。」
「あの、名前は…?私は葛西未愛です。」
彼は、あぁ言ってなかったな〜といって私に手を差し出した。
「上野浩介!よろしくな!」
私は彼…上野先輩と握手を交わした。


