夜空を眺めながらしばらく無言のまま、
祐吾がそっと私の手を握った。


嫌なら離すからと。


ううん、嫌じゃない。


「俺はこの町が好きだから、ずっとこの町にいたいと思う。」


「私もこの町が好き。この町を離れるつもりはないよ。」


その時、誰かの足音を感じた。


「旦那様がお屋敷に帰られているそうなので、早くお戻りになった方が良いかと思います。」


祐吾が舌打ちをした。


「親父はなんの用事があって帰ってきたのか。会いたくもない。」


え、お父さんに会いたくないって。


祐吾はどんな生活をしてきたのだろうか。


お金持ちは幸せだと思ってた。


祐吾はどうしてこの町に戻って来てのだろ。


いつか又、お父さんと一緒にこの町を離れて行くのではないかと不安になった。


祐吾、行かないでよ。


そう強く思った。