本当に些細な事でも、先生ならどう言うのだろうとか、先生ならどんな反応をするんだろうとか。
何かあれば椎名先生に繋げて考えてしまっていた。
私はどうしちゃったんだろう。
自分で自分がわからない。
どうして、どうしてと自問しながら日々を過ごすこと数日。
現在私は、モヤモヤした気持ちのまま、悩みの種になっている本人、椎名先生と一緒に数学準備室にいる。
木目の机の向こうには、清潔感のある白いワイシャツに麻素材の涼しげなジャケットを羽織った椎名先生。
私は、ノートに走らせていた数式を書く手を止めて、ちらりと先生を盗み見る。
長い足を組んだ先生の視線は、私が教えて欲しいと頼んだ問題集に落とされていて。
「……なるほどな」
どうやら、私が理解できなかった箇所を、椎名先生は理解したようだった。
さすが数学教師。
その頭脳、少しでいいから分けて欲しいなぁ。