「とりあえずさ、俺は幼なじみだけどお前の彼氏に立候補するから」


よろしくな、なんて言われて。

私はどう答えていいかわからず、自転車の車輪が回る音にかき消されそうな声で、うん……と、返事をした。


やがて、病院に到着すれば、悠馬は私に手を振って自転車を漕ぎ去る。

にしても、彼氏に立候補するとか、そんなセリフを悠馬から聞く日が来るとは。

小さい頃から1番側にいたつもりだったけど、気付けなかった。


「幼なじみ失格だよね」


ごめんね、と呟いて。

悠馬の姿が見えなくなり、ようやく病院の敷地内へと足を踏み入れた。